第5章

私と律太の関係は日増しに親密になっていったが、互いに告白することはまだなかった。

私たちはよく一緒に写生に出かけた。彼は地質調査、私は絵。

時折、彼は私を自分の所属する地学サークルに連れて行き、友人に紹介してくれた。

「こちらは紫苑、美術科の子だよ」

私を紹介する彼の瞳は、誇らしげに輝いている。

「よっ、奥さん!」

地学サークルの学生たちが冷やかす。

「茶化すなよ」律太は照れくさそうに言った。「ただの友達だ」

だが、私を見る彼の眼差しは、もはや単なる友人に向けられるものではなかった。

彼が抱く私への想いが、徐々に深まっているのを感じていた。

ある週末、私が美術棟で絵を描い...

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